Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
研究課題の最終実施年度にあたり研究成果の取りまとめを行った。初年度は、ボーア人の建設したピーターマリッツバーグに焦点をあて、形成過程及び計画寸法体系を明らかにし、次年度には、その変容過程と人種隔離制度が与えた影響について考察を行った。それらの研究成果を元に、本年度はさらに南アフリカ内陸植民都市の計画理念と空間構成に関する分析・考察をすすめ、南アフリカの都市計画理念を明らかにすると共に、ポスト・アパルトヘイトに対する知見を得た。人口登録法と集団地域法が制定された1950年以降の南アフリカの都市空間は、混住地区や異人種の通過さえ認めない完全なセグリゲーションを目指したものであり、それ以前の計画的に隔離されているが曖昧な部分を残したそれ以前の都市空間とは全く次元の異なるものであった。アパルトヘイトの都市計画理念は、各人種毎の地区を分離、純化し、最低限に統合することであった。都市空間を分離し、純化するゾーニングの手法はセグリゲーションを強化する役割を果たした。しかし、アパルトヘイト崩壊の歴史が示すように、制度的に隔離された居住空間は否定されるべきものであり、居住の自由を積極的に表現した都市計画が必要と考えられる。再編計画においては、住宅地の歴史を抹消する近代都市計画的な手法を否定し、人種の問題として矮小化することなく、従前居住者の記憶や動向を重視することが極めて重要と考える。今後の研究展開として、ポスト・アパルトヘイトの現在でも残る高度に隔離された南アフリカの都市空間に対する具体的な再編計画の策定のために、人種隔離関連法の実効が都市空間に如何なる影響を与えたのか調査分析をすすめる予定である。
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