Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2004: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2003: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Research Abstract |
平成16年度はこれまでに収集した資料を整理すると同時に,夏季休暇および春季休暇を利用し,観光地や都市におけるチャムの織物の流通状況などに関する現地調査を実施した。2004年8月には,ベトナムのチャンパ遺跡周辺にある土産物屋やチャムの村落にある織物工房,直売店などにおいてその流通,販売状況などを調べた。更に2005年3月にはホーチミン市におけるチャムの織物工房,倉庫などを訪問し布の流通,販売状況を調べたほか,昨年度定点調査を行った集落の人々が原料の買い付けに訪れる糸販売店を訪問し,補足調査を行った。 調査の結果,以下のことが明らかになった。 まず,商品として市場に出回っているチャムの織物の多くは,ニントゥアン省にあるM集落において生産されている紋織りの布にほぼ限られているということである。こうした布の流通にはチャム以外の民族すなわちベトナムのマジョリティを占めるキン族も多く関わっており,原料である糸は,ホーチミン市の華人が経営する工場や販売店で取引きされている。また,ベトナムが本格的に市場経済化の影響を受けはじめてから10年以上経った現在では,チャムの織物を販売する土産店やそこで売られる商品は取り立てて珍しいものではなくなってきているが,こうしたなか,古い模様の復興作業が試みられるなど,模様のデザインに対する織り手の意識の変化もみられはじめた。 以上のように,かつて村落社会で自給生産的に行われていた織物生産は、貨幣経済の中において都市や他民族との社会関係を取り結び,現代的に変化しながらも引き続き行なわれているのである。なお,研究以外にも,シンガポール国立大学アジア研究センターにて開催された国際シンポジウム『現代のチャンパ学』に参加・発表をし,あらゆる国の研究者とチャンパおよび現在のチャムに関する学問的交流を行った。
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