Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
原索動物であるホヤ胚の発生において、細胞外のFGFシグナルと細胞内因子が誘導的細胞間相互作用を介した中胚葉のパターニングに関わっている。本研究ではこれらの因子がどのように分子的に相互作用して機能するのかを調べるために、ターゲット遺伝子の発現メカニズムについて解析している。まず、初期胚を用いたBrachyuryプロモーターのレポーター解析によって、FGFシグナルに応答する-598/-499領域と強いエンハンサー活性を持つ-398/-300領域を同定した。これらの領域に直接結合して働く転写因子をゲルシフトアッセイで調べたところ、-598/-499領域中にはFGFシグナルの下流転写因子Hr-Etsが結合する配列(EtsBS)が3箇所存在した。-398/-300領域には内在因子であるHr-ZicNが結合する配列(ZicBS)が1箇所存在した。これら、3箇所のEtsBSもしくはZicBSに変異を入れたコンストラクトはレポーターの発現が著しく減少したのでEtsBSやZicBSはHr-Braの発現開始に重票であることが示唆された。また、EtsBSやZicBSはそれぞれだけではエンハンサー活性を示さず、両結合サイトが存在するコンストラクトでのみFGFシグナル依存的で脊索特異的なレポーターの発現を示した。Hr-EtsとHr-ZicNがHr-Braプロモーター上で相互作用して働いていることが示された。これらのことは、細胞外と細胞内の情報が統合される場所はターゲット遺伝子のプロモーター上であることを意味している。また、様々なレポーター解析の結果から、EtsBSとZicBS以外にも転写活性化や抑制化に働いていることを示唆する領域も見つかっている。同様の解析から、macho-1とFGFシグナルの制御をうけるTbx-6のプロモーター上にもHr-Etsとmacho-1が直接結合する配列を見出した。