Budget Amount *help |
¥3,600,000 (Direct Cost: ¥3,600,000)
Fiscal Year 2005: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2004: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Research Abstract |
視覚処理過程では,欠落した信号が周囲の情報によって補われることがある.その結果として,網膜上に刺激が与えられていないにもかかわらず,まるで存在しているような知覚が引き起こされる現象を充填現象(filling-in)と呼ぶ.色と縞を組み合わせによって起こる色錯覚現象の一つに,マッカロー効果と呼ばれるものがあるが,この現象には色の充填が関わっていることが先行研究によって示されている.本研究では,実際の色刺激と,マッカロー効果による色錯覚を引き起こすためのテスト刺激を水平軸方向のさまざまな視野位置に提示し,錯覚の色強度を測定した.その結果,実際の色刺激は視野位置による違いはほとんどなかったのに対して,色の充填は中心視野よりも少し離れた中心外視野において強く生じることが明らかとなった.さらに上下左右の視野位置による色知覚の違いを明らかにするために以下のような行動学実験を実施した.第一実験では,上下左右4箇所のうちどこかに色が提示される試行と,色が提示されない試行がランダムに混合されており,被験者は色が知覚されるか否かをできるだけ早く判断するよう求められた.その結果,全体として錯覚の色に対する正答率は,実際の色に対する正答率よりも低かった.また,実際の色・錯覚の色のどちらの場合も上下視野よりも左右視野に色知覚が生じた場合に,知覚判断が正確であり,特に左視野の場合に最も高い正答率が得られた.それに対して,第二実験では,刺激が800ms間提示された後に,色が知覚されたか否かを回答するよう求めた.その結果,第一実験に比べて錯覚の色に対する正答率が大きく向上した.さらに興味深いことに,第一実験とは異なり,右視野に色が知覚される場合に,より正確な知覚判断が行われていた.以上のことから,要求される課題により結果として現れる半球優位性に不一致が生じる可能性が示された.すばやい判断を求められた第一実験では,刺激が提示される以前の色への注意が結果に大きく影響しているものと思われる.左視野において,より高い正答率が得られた今回の結果は,色に対する注意によって右半球色領域の活動が大きく増加するという脳イメージング研究の結果とも一致する.色に対する注意によって右半球色領域の活動がモジュレートされているために,色の検出がすばやく行われより正確に判断されたと考えられる.
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