Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
(1)痛み表現の熟達化に関わる研究 初心者、中間、準熟達者の3群の俳優12名ずつに「痛くない」演技、「痛い」演技という、比較的単純な演技と、「痛くないのに痛いふりをしている」演技、「痛いのに痛くないふりをしている」演技という、複雑な演技をしてもらった。その演技を撮影し、一般大学生に見せて評定をおこなうことで、熟達度の異なる3群の俳優の演技を比較した。その結果、「痛いふり」、「痛くないふり」という複雑な演技で大きな差が見られ、準熟達者群は、観客には「ふりをしている」ことが伝わらなければならないということと、舞台上の相手役には「ふりをしている」ことが伝わってはいけないという2側面を両方考慮し、「ふりをしている」ということが伝わるが、それがあからさまではないという、高度で自然な演技をすることが明らかになった。また、この準熟達者の自然な演技は高く評価された。一方、初心者群は、観客ばかりを意識して、「本当は痛くないのにふりをしている」「本当は痛いのにふりをしている」ということが観客に非常に伝わりやすい、おおげさな演技をすることが明らかになった。つまり初心者は、場面の文脈を考慮できないのに対し、経験を積むにつれ、観客も文脈も考慮した演技ができるようになると言える。(2)演劇俳優の熟達化と3つの視点の役割のモデル化 これまでに取ってきたデータを基に、「脚本を読む段階」、「演技計画の段階」、「演技遂行の段階」という演技の3つの段階における演劇俳優の熟達化と、それに及ぼす「役の視点」、「俳優の視点」、「観客の視点」に立つことの役割についてのモデルを構築した。それをもとに執筆した論文が、京都大学大学院教育学研究科紀要第52巻に掲載予定である。(3)博士論文の執筆 補助金を受けた平成15年度〜平成17年度を含む、計6年間の研究をまとめ、「演劇俳優の熟達化に関する認知心理学的研究」という題目で博士論文を執筆した。
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京都大学大学院教育学研究科紀要 52
110006161450
京都大学大学院教育学研究科紀要 51
Pages: 60-73
110001136329