Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
G2期からM期への進行はCdc2/サイクリンB複合体であるM期促進因子(MPF)による制御を受けている。負の制御因子であるWee1キナーゼはCdc2のY15をリン酸化することでMPF活性を抑制している。ツメガエルWee1のN末端側調節領域には生理活性を正および負に制御する調節モチーフ(それぞれNINモチーフおよびTPモチーフと命名)が近接して存在しており、TPモチーフはMPFによってM期特異的にリン酸化される。本研究では、ツメガエル卵を用いてTPモチーフを介したWee1の不活性化機構の詳細を明らかにした。TPモチーフのアラニン置換体(AP)は、野生型(WT)よりも強くM基進行を阻害したが、WTとAP変異体のG2期におけるCdc2 Y5へのリン酸化能に有意な差は見られなかった。さらにin vitro kinase assayの結果から、MPFによるTPモチーフのリン酸化のみではWee1活性が低下しないことが分かった。これらのことから、M期におけるTPモチーフのリン酸化によってWee1の構造に変化が生じ、その結果Wee1のCdc2 Y15に対するリン酸化能が低下かすると考えられた。プロリルイソメラーゼであるPin1でpulldownアッセイを行ったところ、Wee1(WT)はM期特異的にPin1に結合できたのに対して、AP変異体では結合が見られなかった。これらのことより、TPモチーフの異性化によってM期におけるWee1生理活性が低下することが示唆されたので、Pin1のドミナントネガティブ変異体を用いて内在性Pin1の機能を阻害したところ、AP変異体と同程度にWee1(WT)の生理活性が強くなることが分かった。以上の結果より、M期におけるWee1のTPモチーフのリン酸化に伴う異性化(構造変換)がWee1の活性制御に重要な役割を担うことが強く示唆された。