Research Abstract |
先ず,本年度の目的であったミニブタ精漿が精子の細胞膜のコレステロール量の増加および膜の流動性の低下を誘起しているか否かについて検討を行った.精漿に保存した精子のコレステロール量を薄層クロマトグラフィー,filipinを用いて測定した結果,処理区間に有意な差は認められなかった.また,精漿に保存した精子の膜の流動性をM540およびFACSを用いて測定したが,この結果においても処理区間に有意な差は認められなかった.これらの結果より,精漿が精子の耐凍能・受精能を低下させる原因は細胞膜のコレステロール量または流動性とは無関係であると考えられた. そこで,外科的手法を用いて精嚢腺排出管を切断したミニブタを作製し,その個体の精液性状および精子の受精能に及ぼす影響について検討を行った.その結果,手術後の精漿は精子の受精能を抑制しなくなること,またその時の精漿中タンパク質濃度は手術前と比較して1/10以下に減少していたことが明らかとなった.この結果から,ミニブタ精漿中の受精能抑制因子は精嚢腺から分泌されているタンパク質であると推察された. 次に,精嚢腺液中の抑制因子がタンパク質であるか否か明らかにする目的で加熱処理およびprotease処理によってタンパク質を変性させた精嚢腺液に精子を保存した.その結果,タンパク質を変性させた精嚢腺液は精子の受精能を抑制しなくなったことからミニブタ精嚢腺液中の受精能抑制因子はタンパク質であると確認された.次に,50%硫酸アンモニウムを用いて回収した精嚢腺液中のタンパク質をゲルろ過カラムおよびイオン交換カラムに用いて精製を行った.その結果,活性の認められる分画には分子量約50kDaのタンパク質が検出された.また,この分子量約50kDaのタンパク質を含む分画は精子の受精能を抑制するだけでなく,精子の運動性も抑制することが明らかとなった.
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