Research Abstract |
石川県刈安山周辺で,カシノナガキクイムシ(以下,カシナガ)が運ぶナラ菌によって発生しているナラ類の大量枯損について,航空写真を利用して枯死木の位置を調べ,GISに入力し地球統計学を用いて解析を行った。 枯死木樹冠が赤く変色することを利用し,航空写真より色情報を元に半自動的に枯死木を抽出する手法を開発した。RGB色空間情報をそのまま使った場合,枯死木の抽出が困難な場合が多かったため,画像をHSI色空間へ変換し枯死木抽出を行った。その結果,効率的に枯死木位置を抽出することができ,効率的な枯死木位置の把握が可能となった。 航空写真により取得した枯死木位置を用いて,枯死木分布の時間による推移を解析するとともに,被害木発生位置と地形の関係の解析を行った。また,都道府県レベルでの被害報告を元に枯死被害の時間推移の解析も行った。 枯死木分布の時間推移から,枯死被害の拡散速度を地球統計学の手法を用いて算出した。都道府県レベルの解析によって,毎年2〜3kmの速度で被害が拡散していることが明らかとなった。航空写真による解析によって算出された拡散速度は,毎年400〜600mと算出された。また,前年の枯死木の位置から100m以下の距離に位置する近隣の樹木への被害の拡散も見られた。以上のように,枯死被害は少なくとも毎年2〜3km,400〜600m,100m以下の3種類の拡散速度で侵攻していることが推測できた。このような結果となる理由としては,ナラ枯れの原因菌であるナラ菌を媒介すカシナガ成虫の移動経路が異なっていることが考えられた。枯死木位置と地形の関係を調査した結果,今回解析を行った領域では,東側の斜面で他の斜面に比べ多くの枯死木が発生していることが明らかとなった。 この成果により,効果的な防除対策を施せるとともに,将来の被害拡散予測に役立つことが期待できる。
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