Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2005: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2004: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2003: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
|
Research Abstract |
今年度は,研究実施計画に記したように,昨年度に引き続きテクスト批判の基礎的研究をおこなった。対象としたのは,讃歌研究においても基本的文献となる『イーリアス』である。具体的には,現代の主要校訂本であるルートヴィヒ版,アレン版,ファン・ティール版,ウエスト版を比較し,それらの特徴を把握することに努めた。結論として言えることは,今まであまり顧みられてこなかったルートヴィヒ版が非常に優れたものであり,その後の校訂本の基礎になっているということである。最新の校訂本2つのうち,ファン・ティール版は中世写本の伝統を重んじ,ウエスト版は古い証言を重んじるという,相反する原則に則っているが,両者ともに,写本の略号など様々な面で,比較的普及しているアレン版ではなく,ルートヴィッヒ版に従っていることが明らかになった。この事実から,必ずしも普及している校訂本や新しい校訂本が優れたものであるとは限らないという原則を知ることができた。この原則は『イーリアス』のテクストだけでなく,西洋古典文献全般に当てはまるであろう。今後他の作品を扱う場合にも,語句のレベルで研究するには,先ずいくつかの校訂本を比較し,それらの特徴を把握することを必須の作業にしなければならない。 また,昨年夏に,高橋通男著『ヘレニズムの詩とホメーロス』の書評を書く機会に恵まれた。日本には珍しく,ホメーロスの古註を多く取り扱い,テクスト批判にも言及している書であったので,私の研究にも参考になることが多かった。とりわけテクスト批判に関しては,理論のみならず,実践的にも訓練を積んでいなければ,決して十分な成果は出せないということを学ぶことができた。以上が本年度の研究実績の概要である。
|