Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2004: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2003: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Research Abstract |
膜型マトリックスメタロプロテアーゼ1(MT1-MMP)は,大腸・肺・乳癌などの癌組織に高発現が認められ,癌浸潤先端部に局在すること,癌細胞株を用いた細胞生物学的解析より,MT1-MMPの発現抑制は浸潤能を抑制することから,癌浸潤に重要な分子であることが指摘されている.また近年になり,MT1-MMPは細胞表層の他の分子と相互作用を介して,活性制御を受け,癌の浸潤・転移に重要な役割を果たすと考えられている.しかしながら,MT1-MMPの活性を制御する分子や標的分子は十分に明らかとなっていないのが現状である.そこで本研究は,MT1-MMPと複合体を形成する分子をプロテオミクス解析手法を用いて明らかにすることを試みた. 本研究代表者はMT1-MMPおよび,対照としてMT4-MMPを発現誘導するヒト悪性黒色腫株(A375)を樹立して,それら細胞株からMT1-MMP複合体を精製した.これら複合体蛋白質の同定を,Nano-Flow LC MS/MSを用いて行なった.その結果,既知のMT1-MMP結合蛋白質に加え,新たなMT1-MMP結合候補蛋白質を多数同定した.これらMT1-MMP結合候補蛋白質より,まず9種類の膜蛋白質に関して,免疫沈降法によりMT1-MMP複合体形成の検証を行なった結果,8分子がMT1-MMPと共沈することから,同定した結合候補分子の多くがMT1-MMPと複合体を形成している可能性が示唆された.さらに,蛍光免疫染色法による解析から,共沈した複数の膜蛋白質とMT1-MMPの形成する複合体は,癌細胞の運動先進部位で認められた.これらの分子は,既報より癌組織の悪性に伴い高発現が認められることから,MT1-MMPがこれらの分子と複合体を形成することで運動や細胞増殖,浸潤などの細胞機能に関与している可能性が示唆される.また研究代表者は,これら同定した分子の中に,MT1-MMPが分解する新たな膜蛋白質が存在することを明らかにしている. 本研究より同定した,機能未知分子を含め複合体候補分子を個別に解析することで,細胞表層で行われているMT1-MMPを介した分子間の相互作用が及ぼす細胞機能への影響や癌の悪性形質に関与するMT1-MMPの理解を深めることに繋がるものと期待される.
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