Research Abstract |
細胞分化の柔軟性は植物細胞で特に著しく,オルガネラの分化にも高い柔軟性が要求される.なかでも色素体は著しい可塑性を有しており,細胞機能に応じて様々に発達・分化し得る.色素体の遺伝子発現制御機講を解析するためには,特微的な遺伝子発現パターンを持つ異なる型の色素体核を無傷単離し,それらを解体・再構成し、転写パターンを比較検討できることが望ましい. タバコ培養細胞BY-2はこのような研究に理思的な系であるが,培養過程でのオルガネラの発達・分化の様式は明らかにされていない.DAPI染色-抗BrdU抗体免疫蛍光顕微鏡法や定量的サザンブロット法を用いて,通常の培養過程や培養条件を変更した際のオルガネラの挙動を解析した。その結果,原色素体やミトコンドリアのDNA合成は細胞増殖が活発になる直前に,最大になり,細胞核の分裂が活発になる時期には逆に減少することを明らかにした.また,培養7日目の定常期にあるBY-2を2,4-Dを除き6-benaylaminopurine(1mg/l)を添加した改変Linsmaier and Skoog培地に植え継ぐと,原色素体は12時間目頃から澱粉を蓄積し,48時間目頃にはほとんどがアミロプラスト化することを明らかにした. このような培養系を用いて,原色素体核を無傷単離し,単離色素体核の解体・再構成実験を行った.単離原色素体核をNaCl処理し,タンパク質を段階的に外し,原色素体核の構造と転写活性を解析した.NaCl濃度を上げると,0.1Mで31,30kDaの,0.7Mで69,14kDaのタンパク質が外れ,原色素体核の構造が拡散し,転写活性は著しく減少し,転写産生の構成も著しく変化した.解体した原色素体核を含む溶液のNaCl濃度を段階的に下げると,原色素体核が再構成されるが,再構成した色素体核のin vitro転写効率は解体時を上回ることはなかった.このような再構成系では,核構造が見かけ上再成されても,転写機能に関与する要素の再構成が十分でないことがわかる.今後,核構造の構築に関与するDNA結合タンパク質とRNA合成酵素等の転写機能に直接関与する因子を分別単離し,転写機能を保持した色素体核の再構成系の開発を試みる予定である.
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