Research Abstract |
背景:本研究の主な目的は,"物理的に埋め込まれた"情報処理のフレームワークを確立し,身体性がどのように情報処理を助けるかをより良く理解するための分析ツールを実現し,"よりよい"知能システムの設計にそのツールがどのように使えるかを理解することである.その基本原理とは,"身体を持つエージェントは受動的に環境からセンサ情報を受け取るのではなく,環境内での行動を通して取得したセンサ情報を,積極的に構造化,選択し,活用する"というものである.前回の報告(2006年3月)以降,"Jounal of Robotics and Autonomous Systems on"Morphology, Control, and Passive Dynamics"の特集号(Paul, Lungarella, and Iida,2006)の招待共編と,二つの国際ワークショップ(http://www.isi.imi.i.u-tokyo.ac.jp/~maxlにハンドアウト掲載)のオーガナイズ以外で,さらに研究成果を上げた.一つは,情報の生成と処理における身体と行動の重要な役割に関係する"身体性情報処理"と「理論的な」貢献(Lungarella and Sporns,2006).もう一つは量的なツールと指標(Lungarella, Ishiguro, Kuniyoshi, and Otsu, in press ; Lungarella and Sporns,2006a, b)および,情報理論と最適化に基づく行動戦略の設計のための目的関数(Sporns and Lungarella,2006)という少なくとも二つの,発明指向な応用的貢献である.それぞれの貢献について,下に詳細を述べる. 理論的貢献:二つの論文(Lungarella and Sporns,2006;Sporns, Karnowski and Lungarella,2006)の中で,我々はどのように感覚-運動の相互作用と身体の形態が,神経制御アーキテクチャによって,統計的な秩序と情報構造を感覚入力の中に誘導するかを示した.また,どのようにセンサ-神経ユニット-効果器間の情報の流れが環境との相互作用によって活発に形作られるかも示した.より具体的には,実際のロボットとシミュレーション上のロボットから集められた感覚運動データの解析を行い,情報構造の存在と,動的にカップリングされた感覚運動系の活動によって誘発された有向性の情報の流れの存在を明らかにした.これらの感覚-運動ネットワーク中の情報構造と情報の流れは,a)空間的,時間的に顕著であり,b)学習によって影響され,c)身体の形態によって変化することを発見した. 応用的貢献1:情報構造が,行動の形成や協調の増加を導くような進化原理として役目を果たしうるかということに対し,我々は行動的かつ情報理論的コスト関数に従うシミュレーション上のクリーチャを用いて協調行動を進化させることによって,問題に取り組んだ(Sporns and Lungarella,2006).結果,情報構造の最大化は,協調行動の生成において高い効果があることを示しており,能動的に生成された情報構造が持つ,身体性を持った認知における潜在的で中心的な役割について更なる立証を与えている.以前に発表した論文(Lungarella and Sporns,2005;Neuroinformatics)で提案したツールから離れ,我々は新しく発見・発明されたツール群を適用した(応用的貢献2.参照). 応用的貢献2:我々は,サブシステムに対応する時系列がどの程度情報の生成に貢献しているか,サブシステム間でどの程度情報が交換されているかという指標のうちの一つにこの問題をマップし,感覚-運動変数間の因果的依存性を明らかにする新しい手法セットを発明した(Lungarella, Ishiguro, Kuniyoshi, and Otsu,2007(in press);Ishiguro, Otsu, Lungarella, and Kuniyoshi, submitted).より良く感覚-運動データの情報構造を特徴づけるために,我々は多変量かつマルチスケールの指標セットも提案し,示した(Pitti, Lungarella, and Kuniyoshi,2006;Lungarella, Gomez, and Kuniyoshi, in preparation).
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