Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2006: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2005: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2004: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
ハスモンヨトウにおける窒素代謝とvolicitinの関係を明らかにした.グルタミン酸のグルタミンへの変換とvolicitin生合成の関連を検討したところ,15N-ラベル体アンモニアを用いた代謝物トレース実験とLCMS, LCMS-IT-TOF,及びGCMS分析により,餌中のグルタミン酸がアンモニアを取り込んでグルタミンとなって,volicitin生合成に利用されることが明らかになった.15N-NMR測定から,このグルタミン酸-グルタミンの変換にはグルタミン合成酵素が関わることが示唆された.腸管組織におけるこの反応は,これまであまり注目されていなかったが,グルタミン酸を効率よく体内に吸収する重要な経路であることが示唆された.この細胞内で生成するグルタミンがvolicitinとなって細胞外へ移動することで,細胞内のグルタミン濃度の上昇を抑え,結果としてグルタミン酸の吸収とアンモニアの解毒,窒素の効率的吸収と再利用が達成されるものと考えられる.鱗翅目幼虫がvolicitinを積極的に生合成している一つの理由として,このような新規の窒素代謝メカニズムを明らかにした.これまでvolicitin類が報告されていたのは,ごく一部の実験用昆虫からがほとんどであった.そこで,野外から採集された,10科22種の鱗翅目幼虫を対象にvolicitin類のスクリーニングを行った.その結果,新たに8科11種よりvolicitin類を同定した.これらの幼虫が持つvolicitin類縁体8種の組成パターンを整理したところ,進化系統樹とvolicitin組成に一定の相関が見られた.Volicitin類は比較的大型で広食性幼虫に見られ,種の分化とともに類縁体が多様化した可能性が示唆された.上述(1)の窒素代謝におけるvolicitinの生理機能と照らし合わせると,幼虫が窒素栄養価の低い植物を餌として利用する際に,その効率的吸収を目指してvolicitin類縁体を介した窒素代謝を開拓し,より広食性になるにつれて,その解毒代謝酵素によりvolicitin類の多様化が進んだことが示唆された.
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