Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
胚で産生されるインターフェロンτ(IFN-τ)は、反芻家畜の妊娠認識因子として広く知られているが、培養子宮上皮細胞へのアポトーシスを引き起こすことも報告されている。また、IFN-τと同様にI型IFNに分類されるIFN-αが組織や細胞のアポトーシスを誘導していることも報告されている。ウシ子宮内膜上皮細胞を用いてI型IFNによるアポトーシス誘導並びにプロジェステロン(P)による抑制作用について評価した。子宮内膜上皮細胞に、P、IFN-τ、およびIFN-αをそれぞれ48時間添加する区、またPとIFN-τまたはIFN-αを混合添加する区を設け、無添加区を対照区とした。実験終了後、コメットアッセイによりDNA損傷を解析した。IFN-τおよびαによって子宮内膜上皮細胞のアポトーシスが誘導された。一方、P添加による影響は見られなかった。また、IFN-τやαによって引き起こされたアポトーシスはPの添加によって軽減された。さらに、I型IFNによってアポトーシス関連遺伝子の発現量にも変化があった。すなわち、I型IFNによってアポトーシス促進因子の発現が増加し、反対に抑制因子の発現が減少することが明らかとなった。以上の結果から、ウシ子宮内膜上皮細胞でのアポトーシス誘導はI型IFNに共通した現象であり、Pにより抑制されることが示唆された。また、上記の細胞培養系で得られた実験結果を生体で検証するために、ウシと同じ反芻家畜であるヤギをモデルとして試験を行った。交配日または発情日を0日目とし、14日目に屠畜後子宮および胚を採取した。実験区は交配を行わず通常発情周期のグループ、交配後14日目に屠畜するグループ、そして交配後10日目にプロジェステロンの影響を除外するために、卵巣を除去し14日目に屠畜するグループに分類した。回収した胚を顕微鏡下で観察してみると、通常の妊娠グループと卵巣除去グループとの間に大きな差は見られず、この時期の胚の成長にはプロジェステロンの影響は少ないのかもしれない。