Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
近年、森林の断片・孤立化や面積の減少などが進行しており、森林に生育する樹木は、個体密度の低下や集団内個体の平均血縁度の増加といった個体群の生態的・遺伝的構想の変化に晒されている。樹木個体群の更新・維持や遺伝子流動にとって重要な役割を果たす繁殖過程は、交配様式、近交弱勢、資源制約など多くの要因が関わっており、開花個体密度、血縁度といった生態的・遺伝的双方の個体群構造が最も影響を及ぼす過程であるといえる。本研究では、森林の保全に役立つ新たな知見を提示すべく、樹木の個体群構造が種子による繁殖及び遺伝子流動に与える影響とそのプロセスを、生態・遺伝的両視点から明らかにすることを目的としている。平成18年度の研究成果は以下の通りである。1.絶滅が危惧されているシデコブシについて、小集団化の進行に伴い、遺伝的劣化、自殖率の増加、花粉不足の増加などによって種子生産が著しく減少する危険性を論文にて示し、それに基づいて具体的な保全策を考案した。さらに保全策について具体化するため、集団間交配実験を行い、外交弱勢の危険性(あるいは最適な交配距離)について検討した。2.自然状態において顕著な密度変化が見られる雌雄異株低木種エゾユズリハについて、開花・結実量を継続して(4年間)調べると共に、個体のおかれた光環境なども測定し、開花・結果量に及ぼす影響について検討した。その結果、エゾユズリハの開花・結実には、光環境の影響はなく、年度の影響が強く見られることを明らかにし、花粉不足が起こりやすい状況を繁殖投資への周期性によって克服する仕組みを指摘した。3.日本海側冷温帯域にある天然スギ林のクローン構造を調べた。日本海側天然スギのクローン成長には、斜面上の雪圧変化が大きく関わるため、斜面地形とクローン構造の間には何らかの関係があることが予測され、交配様式や遺伝構造の維持に大きな影響を与えている可能性がある。クローン構造を調べた結果、斜面上でのスギは、大きな斜面地形とはほぼ独立して、比較的小さなスケールでのクローン成長を行い、一度定着した個体を維持し続けている可能性を明らかにした。
All 2007 2005
All Journal Article (5 results)
Biological Conservation 136
Pages: 315-323
森林総合研究所関西支所研究情報 83
Pages: 2-2
Annals of Botany 95
Pages: 1009-1015
Journal of Forest Research 10
Pages: 67-71
Annals of Botany (In press)