Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究では、森林の断片化が鳥による種子散布の効果に与える影響を明らかにするため、人間活動による断片化が顕著な里山林を野外実験室として、面積が異なる林分において種子散布システムを対象に定性的・定量的調査をおこなった。「鳥による種子散布」(以下、鳥散布)は森林生態系を維持する上で重要な生態系機能であるが、その効果については果実(餌)と鳥(散布者)の2生物問の直接的作用を対象とした研究がこれまで主であった。しかしながら、健全種子量や果実の質を変化させる昆虫(食害者)の直接的・間接的作用によっても影響を受けていることから、調査は果実-鳥に昆虫を同時に扱った3生物間の相互作用に着目しながら個別におこない、森林生態系における鳥散布の生態学的意義の理解を目指した。調査を通してこれまでに明らかになった点は、1)森林面積の減少に伴う鳥類の飛来数・密度の減少(面積効果)、2)鳥類の飛来数に対する林分あたりの果実生産数の効果(餌資源効果)、3)凶作年における強い面積効果と豊作年における強い餌資源効果、であった。面積効果は豊作年よりも凶作年において強く現れた一方、餌資源効果は、凶作年では面積の効果にくらべてより弱く、豊作年ではより強かったことが示された。鳥類の渡りの中継地である調査地域では、果実資源が豊富な年は越冬時期まで滞在する個体が増え、それらが柔軟に果実を追跡し消費しながら越冬していると考えられる。今後は、林分ごとに果実・種子食害、落下・散布種子、実生の定着率について解析を進めて、種子散布に対する鳥頬と食害昆虫の直接的・間接的関係の定量化を図り、森林の断片化が鳥散布システムに与える総合的効果について考察していく。
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