Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
KamLAND (Kamioka Liquid Scintillator Anti-Neutrino Detector)実験では、液体シンチレータの大発光特性を生かし、平均距離、約180kmの原子炉や地球から飛来する反ニュートリノの観測を行なっている。昨年度までの原子炉ニュートリノの研究で、99.998%の信頼度でニュートリノの消失を確認すると同時に、ニュートリノ振動の重要な特徴となるスペクトルの歪みも99.78%の信頼度で確かめられた。KamLANDにおいて振動パラメータをさらに精密に測定するには、統計量の拡大と系統誤差の縮小が必要となる。統計量の拡大にはこれまでの半径5.5m球の有効体積(697m^3)を拡大し検出器外側のデータも解析に取り入れることが目標となる。有効体積を拡大するにあたって、最も顕著なバックグラウンドは検出器外側と低エネルギー領域にある偶発イベントであるが、これらのイベントは検出閾値を高くすることで除かれる。また、ミューオン起源の高速中性子は検出器外側に集中する。エネルギーの高い領域では、高速中性子のバックグラウンドが支配的になるため、ミューオンの軌跡と中性子生成のプロセスを含めた詳細なシミュレーションが必要となる。検出器に到達する高速中性子数を見積もる際に、最も不定性が大きいのはミューオンによる中性子の生成プロセスである。この不定性を抑えるために、検出器外側にある外部検出器を通過したミューオンを用いて、中性子生成量に対する校正を行なう。外部検出器との同時計測を用いて観測された中性子生成量とミューオンフラックスから予想される生成量との違いは1.5倍程度であった。また、ミューオンが外部検出器を通過しない場合でも、約半数はミューオンがおこす電磁シャワーによって外部検出器で観測できることが分かった。この結果、原子炉ニュートリノの観測エネルギー領域において高速中性子のバックグラウンドは全体積で0.002events/day程度となり、原子炉ニュートリノイベント数0.8events/dayに対して十分に小さくなることが確かめられた。2002年3月9日から2004年10月31日までのデータ(749.1日)を用いて解析を行い、3.0MeV以上のエネルギー領域において有効体積をこれまでの半径5.5m球から半径6.0m球に拡大したところ、統計量は1.3倍となり振動パラメータに対する感度が向上した。その結果、>99%の信頼度で振動パラメータを質量2乗差Δm^2=7.9x10^<-5>eV^2付近のみに絞り込むことができた。
All 2005
All Journal Article (2 results)
nature 436
Pages: 499-499
Physical Review Letters 94
Pages: 81801-81801