Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
含水岩石で観測される誘電率(複素誘電率ε*の実部)が周波数に反比例する型(1/f型)の誘電分散の原因とε*のスペクトルから含水状態を読み解く法則性の抽出を目的として、KC1溶液で含水状態にしたガラスビーズ(直径1mm)、および岩石試料(手取層砂岩、万成花陶岩)の測定を行った.測定は昨年度までに開発した高精度の複素誘電率測定手法により100kHzから10mHzの周波数で行い、電極の分極の影響を除くことに特に配慮して測定を行った.含水状態のガラスビーズ、岩石試料で1/f型の誘電分散が観測された.不飽和状態のガラスビーズのε*は溶液の電気伝導度σwに依存せず飽和度Sに強く依存した.この依存性をモデル計算と比較して解析することにより、ガラスビーズ表面に導電層があり、この層が層に平行な方向にσwに依存しない導電性と1/f型の誘電性を有すること、試料全体のε*はビーズ表面の導電層とビーズ間に局在した水塊のインピーダンスからなる等価回路で表され、Sが増すにつれ両者の結合は直列から並列に移行することが分かった.岩石試料については飽和状態でのε*のσw依存性を調べ、固液界面の電気二重層が層と平行な方向に1/f型の誘電性を持つと仮定した場合、試料全体のε*が導電層と間隙水のインピーダンスの直列回路(σwが低い場合)または並列回路(σwが高い場合)に調和的であることを示した.岩石の内部構造を角に丸みを持つ四角柱の一様周期構造と仮定してε*のσw依存性を解析することにより、鉱物粒形など岩石の内部構造に関係するパラメーターを推定することができた.本研究により、含水試料の1/f型誘電分散は濡れた固体表面の導電層の性質であり、誘電性の強さは導電層とバルクの水を流れる電流の割合で決まり試料の内部構造を反映していることが示された.今後多様な岩石種について同様の事例研究を行うことが望まれる.