Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
海洋溶存態有機物の起源、溶存態有機物への形成プロセス、海水中での溶存有機物の挙動等の動態を明らかにするためには、海水中での状態を保持した高分子状態での分析が不可欠である。従来、溶存態タンパク質の検出のために、Sodium Dodecyl Sulfate(SDS)を用いた限外濾過法で海水中の溶存態有機物を濃縮・脱塩し、ここからタンパク質が抽出されてきた。しかし、この濃縮方法で回収される溶存態タンパク質はSDSと相互作用能が高いものに偏る可能性がある。さらに、抽出されたタンパク質の分析行う場合、続けて適用できる分析技術が限られる。本研究では、溶存態タンパク質をより詳しく調べることを念頭に、海水からの溶存態有機物の濃縮法について検討した。本年度は、各種の界面活性剤を用いた限外濾過法で濃縮した溶存態有機物試料から溶存態タンパク質を抽出し、電気泳動法を用いタンパク質の検出を行った。この結果、SDS以外の界面活性剤を用いて濃縮した試料には、タンパク質は含まれていなかった。そこで、海水に比べて塩が少なく脱塩が比較的容易であり、溶存態タンパク質の存在が確認されている琵琶湖の湖水中の溶存態有機物を濃縮し、溶存有機物の濃縮法について検討した。溶存有機物の濃縮には、SDSを用いた限外濾過法、凍結乾燥法、遠心減圧濃縮法を用いた。その結果、遠心減圧濃縮法、凍結乾燥法、SDSを用いた限外濾過法の順で検出されたタンパク質の数が多かった。すなわち、濃縮方法によって抽出されるタンパク質の数が異なることが明らかになり、海水中からSDSを用いた限外濾過法により濃縮される溶存有機物には、回収されない溶存態タンパク質が存在する可能性が考えられた。
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Progress in Oceanography In press