Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
東南アジアに生息する社会性昆虫スペシャリスト捕食者であるツヤヒメサスライアリAenictus laevicepsは決まった巣場所をもたずに移動しながら、主に他種のアリのコロニーを活発に攻撃する。このアリによる高い捕食圧が熱帯でのアリ群集の種多様性維持に寄与していることがこれまでの知見から示唆されている。また上位捕食者であることから、人為的な撹乱に対する感受性も高く、環境の撹乱度合いに対する指標種として適していることがわかっている。しかし、移動性の高さや休止期の存在によりその生活史でさえこれまでほとんどわかっていない。そこで本研究では、ツヤヒメサスライアリが熱帯域で果たす生態的な役割の解明の第一歩としてコロニー数の推定を試みた。方法マレーシアサラワク州ランビル国立公園の林床を歩き回り、コロニーを発見したらワーカーを10頭ずつサンプリングした。サンプリングした個体をマイクロサテライト6遺伝子座を用いて、遺伝子型を特定し、特定したワーカーの遺伝子型から女王の遺伝子型をMoilanen et al.2004の方法により推定し、コロニー識別を行った。コロニー識別のデータを用いてOtis 1978の標識再捕獲法によりコロニー数推定を行った。サンプリング調査は2003〜2006年に計8回行った。結果Probability of Identityは4.44×10^(-11)であり、用いた6遺伝子座によってコロニー識別は十分可能であった。ワーカーをサンプリングした77コロニー中、46コロニーの女王の遺伝子型を特定できた。そのうち4回捕獲されたのが1コロニー、3回捕獲が2コロニー、2回捕獲が6コロニーだった。全部で33タイプのコロニーを推定した。これらのデータを用いたコロニー数推定を行った結果、調査地には89±18.75(SE)コロニーのツヤヒメサスライアリがいると推定された。
All 2007
All Journal Article (1 results)
Molecular Ecology Notes