Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度は前年度に引き続き、東北大学大学院文学研究科において、野家啓一教授の指導のもとで本研究計画を遂行した。本年度後期11月には、日本現象学会の研究大会において研究成果の発表を行った。その後、当学会の審査を経て、学会誌『現象学年報』への掲載が決定された。また、同月には、東北大学で開催された「現象学を語る会」において、中国・香港大学から参加された発表者、劉國英氏のメルロ=ポンティ研究論文「The Madness of Vision : The Painter as Phenomenologist in Merleau-Ponty」の翻訳を行った。さらに同3月には、学位申請論文『絵画における視覚と可視性の哲学-現象学的像理論とメルロ=ポンティにおける可視性の哲学-』を提出した。本年度は本研究最終年度であり、充実した成果を得ることができた。当初の研究計画であるイマージュ-図式の相関関係における物的イマージュ論の再構築を行うため、メルロ=ポンティの主要著作および講義ノートをもちいながら概念整理をし、フッサール、サルトルらの現象学的像理論やアリストテレス、カント、ベルクソンなどの著作における概念の哲学史的変遷を研究した。とくにメルロ=ポンティにおける身体図式概念について理解を深めるために、ピック、ヘッド、シルダーといった心理学・生理学者たちのテクストとの対比によってその独自な思想内容を明らかにした。また、本研究の根本的な主題である知覚-イマージュ-思考の相互媒介的連関性を考察するうえで、このような図式研究は大きな意義をもった。すなわち、物的イマージュである絵画の製作において身体における知覚図式がいかに反映されるかという問題が、「変身」「変形」といったメルロ=ポンティの基本概念を媒介として理論化することができたのである。このような考察に基づいて、さらにはセザンヌやクレーなど実製作の研究をとおして、視覚と思考を媒介とする絵画的イマージュの意味を現象学的・人間学的見地から解釈した。
All 2007
All Journal Article (1 results)
現象学年報 (印刷中)
40016394348