Research Abstract |
本研究では、ファッションと身体性という二つの概念を鍵に女性詩人とモダニズムの関係を解明する。本年度は、中心となる複数の詩人のケースステディを主に行った。 20世紀初頭のモダニスト期に属するアメリカ女性詩人を横断的に考察した。対象詩人は以下のとおりである。1)モダニスト詩人(Marianne Moore)、2)モダニストとして完全に認知されていない詩人(Amy Lowell, Djuna Barnes)、3)モダニズムとは対照的な立場をとった詩人(Edna St.Vincent Millay, Elinor Wylie)。 具体的には、これらの詩人の主要な詩集を精読し、先行研究や伝記に学んだ。Moore, Lowell, Barnes, Wylieに関しては、研究社『英語青年』誌の「海外新潮」欄のなかで、それぞれの詩集や近年の研究動向を紹介した(2004年5月,7月,9月,11月,2005年1月,3月号)。また、Mooreのモダニズム詩について、日本アメリカ文学会東京支部11月例会において口頭発表を行った。 ケーススタディを通して明らかになったのは、これらの女性詩人の共通点と相違点である。例えばMoore, Barnes, Millayはみな男装をしたが、その意味合いは彼女たちの詩学との関係でそれぞれ異なる、,すなわち、詩人の服装の選択が示唆するところは、Mooreにおける両義的なスタイルであり、Barnesにおけるグロテスクな身体と曖昧なセクシュアリティであり、Millayにおける自由恋愛を詠う奔放である。一方、Lowellの肥満体と彼女の詩の偏った評価との密接な関係も確認した。 今後は、モダニズム理論やファッション理論を踏まえながら、以上に挙げた考察を文化・歴史・社会的文脈に位置づけてゆく。
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