Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
目的と仮説/肝臓、膵臓に代表される内胚葉由来組織には、共通幹細胞の存在が考えられる。これら幹細胞には共通する細胞性質と、相互の組織細胞への分化転換能を持つ事が予想される。齧歯類の導管結紮唾液腺より分離された組織前駆細胞は、肝臓及び膵臓内分泌細胞への分化転換能を有していた。齧歯類の次に、大型哺乳動物であるブタでも同様に、導管結紮唾液腺からの前駆細胞分離を行った。その結果、齧歯類から分離された細胞に極めて性質の類似した前駆細胞の分離に成功した。ラット、マウス、ブタでの研究結果は、唾液腺由来前駆細胞に多分化能が保存されている事を示した。一方で、ヒト唾液腺からの前駆細胞分離に際しては、実験的組織障害の賦与は望めない。その為に障害を与えていないヒト唾液腺からの前駆細胞の分離と同定を行った。方法/成体ヒトの唾液腺組織分散液より、抗CD49f及び抗Thy-1抗体を用いてFACS法により組織前駆細胞を分離した。結果/CD49f+/Thy-1+分画中の細胞は1型コラーゲン上の平板培養条件下で良く増殖した。単一細胞に純化したCD49f+/Thy-1+細胞(ヒト-SGP細胞)は、細胞内ラミニンとp75^<NGFR>を発現した。唾液腺組織間質(導管周囲領域)にごく少数のThy-1+/p75^<NGFR>+細胞が見られ、ヒト-SGP細胞の組織内局在が明らかになった。コンフルエントの状態以上に平板培養を継続すると、細胞塊形成が一部に起こる。これらの細胞塊の中にインスリン及びグルカゴン陽性細胞が見られた。ヒト-SGP細胞を膵内分泌細胞の表現型を有する細胞に誘導するには、スフェロイド培養が有効である。スフェロイド形成細胞の産生した内因性インスリン値を良く反映するC-ペプチドを測定した。スフェロイド体のC-ペプチド含量は低値であった(3.5ng/mg of protein)。スフェロイド体では、早期膵島分化因子NKx6.1、内分泌前駆細胞マーカーNgn-3、導管上皮細胞マーカーCK19を全て同時に発現していた。この遺伝子発現パターンより、ヒト-SGP細胞はスフェロイド培養により膵内分泌細胞の表現型を示す細胞に分化を開始したが、細胞分化は未熟なままの状態に止まっていると考えられた。結論/ヒト唾液腺は膵臓の再生医療に有用な内胚葉系前駆細胞の供給源になる可能性がある。
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