Research Abstract |
本研究は,運動補助装置に適応学習理論を応用し,生体信号から人間の特性を自律的に学習させ,かつ人間は装置に習熟しながら適切な運動イメージを教示可能なシステムを構築することで,身障者の運動機能獲得の技術的バックアップを目的とする.このようなシステムは,相手の特性に応じて相互学習するため系が不安定になりやすい(共適応の問題).その為,従来法における「ある運動イメージとその時の生体信号パターンが1:1対応する」という仮定は装置の動作識別率の低下を引き起こすと考えられる.そこで本研究では,本年度を基礎研究に位置づけ,変化する対応関係の影響の調査及び変化に追従する適応機構の検討を行った.これら研究実績を以下に示す. 本研究では,筋電義手及び筋電制御型電気刺激による歩行補助装置を運動補助装置として採用した.そこで実験環境として1)表面筋電位センサ2)手指形状計測用データグローブ3)義手指角度・把持力計測用センサ4)解析ソフトウェアを開発した.これまでの実験で確かめられたことを以下に示す. 1.1つの運動イメージに対する実際に得られる信号パターンの再現性を情報エントロピーにより定量化し解析を行った.その結果,身障者は健常者に比べこの対応関係を獲得するのが困難であることを,エントロピーにより明らかにし,運動イメージを固定するような訓練が必要であるという知見が得られた. 2.ある運動の過渡及び定常状態の信号群から抽出される特定の信号パターンと運動イメージとの対応関係を学習データとし,その曖昧さを,信号パターンが形成するクラスタ内の異なる運動イメージの重複度としてSOMとエントロピーにて表現した.この指標に基づき学習データの選別を行うことで,この対応関係を自律的に調整する適応機構を実現した.その結果,識別率を低下させずに対応関係の時間変化に追従し,8動作を安定して識別することが可能となった.
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