Project/Area Number |
04J09789
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
ヨーロッパ語系文学
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
小林 薫 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2004 – 2006
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2006)
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Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2006: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2005: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2004: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 古代ギリシャ / アイスキュロス / 悲劇 / 生まれ / ソポクレス / エウリピデス / エウリピデース / ピュシス / ノモス / 民主政 / ソポクレース |
Research Abstract |
(1)ギリシア悲劇における「生まれ」概念の検討、および上演当時のアテナイにおける「生まれ」概念をめぐる言説との関係を明らかにするため、これまでの成果を踏まえ、ミュケナイ王家伝説を扱ったアイスキュロスの「オレステイア三部作」、ソポクレス『エレクトラ』、エウリピデス『エレクトラ』の比較研究を行った。 父アガメムノンの悲惨な最期と息子オレステスの復讐の立派さを歌う叙事詩『オデュッセイア』とは異なり、ギリシア悲劇で扱われるミュケナイ伝説は、「父の復讐のための母殺し」の是非という、オレステスの復讐が内包する血縁関係をめぐる義務と禁忌の葛藤を描くものであり、「生まれ」という社会的言説のはらむ矛盾が全面的に押し出される。この矛盾にアイスキュロスはオレステスの裁判と票決による無罪判決という形である種の決着を付けるが、ソポクレスやエウリピデスほ「父の復讐のための母殺し」というテーマを踏襲する点でアイスキュロス作品(とりわけ『コエーポロイ』)に依拠しつつも、異なる仕方で「生まれ」という言説の矛盾を提示している。 ソポクレスの『エレクトラ』では、「策略」を用いたオレステスの帰還をアガメムノンの帰還やオデュッセウスの帰還(『オデュッセイア』)になぞらえる事で、オレステスの「復讐=母殺し」の矛盾を「帰還の失敗」として強調する。またエウリピデス作品では、「生まれ」の義務と禁忌というアイスキュロス以来の問題に加え、オレステスやエレクトラの「高貴な生まれ」と現実の間の乖離が扱われている。 (2)岩波書店の『ギリシア悲劇全集』第12巻(エウリピデス断片邦訳)が1993年に出版された際、その底本となったNauck-Snell, Tragicorum Graecorum Fragmenta vol.5(1964)はRichard Kannichtにより改訂版が準備されている最中であったが、岩波版編者の尽力により、断片番号の改訂やNauck-Snell以降に発見されたパピルス断片の採用など、1993年段階での最新の知見が岩波版には反映されている。2004年のKannichtによるTGF vol.5改訂版公刊を受け、Nauck-Snell版との比較を行うと共に、岩波版以降の研究の進展を跡づけ、また岩波版によって日本語でエウリピデスの断片集に接する読者に向けて、新版と旧版の違いをわかりやすく示した。
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