Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
今年度は、次の2つの分析課題に取り組んだ。第一に、アメリカにおける非学位課程(サーティフィケート・プログラム)の普及過程について、さらに分析を進めた。一昨年後半〜昨年にかけては、おもにここ20年ほどの拡大の流れと全体的な普及状況を把握することに努めたが、今年度は、実務的な運用状況や制度化の詳細を、いくつかの大学の事例をもとに検討した。第二に、昨年度行った、学生の退学行動の分析をもとに、若年層のキャリア変容と高等教育制度の柔軟化との関係を理論的に整理した。第一の課題については、以下の2点が明らかになった。(1)職能団体との連携において、大学院レベルでもサーティフィケートが拡大してきていた。惇門大学院のみならず、カーネギー分類で博士号授与大学に分類されるような大学群でも、かなりの割合でサーティフィケート・プログラムの普及が見られた。(2)大規模大学の非学位課程では、しばしば、コミュニティ・カレッジの準学士課程のような正規の課程とは別に、学士課程への編入や単位移動を可能にするようなしくみの整備が見られた。以上の結果から、非学位課程が、最終的には学位課程に移籍したいと考える学生にとって、傍系ルートとして機能している様子が確認された。第二の課題については、ここ30年ほどのあいだにアメリカで起こった現象が、「制度にうめこまれたキャリア」から「市場化されたキャリア」への移行だったことが明らかとなった。学生のキャリアはより個人化し、属性にかかわらず断続的な就学行動が増える中で、高等教育の教育課程には、大学どうしの互換性があることが求められるようになり、前期課程のカリキュラム標準化を含め、共通性の高いカリキュラム構造が模索される現状があることを示した。以上の研究成果のうち、第一の部分については、雑誌『IDE現代の高等教育』および日本高等教育学会第9回大会にて発表した。第二の部分についても論文を執築中である。
All 2007 2006
All Journal Article (2 results)
IDE 現代の高等教育 No.489
Pages: 60-64
東京大学大学院教育学研究科紀要 第45巻(印刷中)
110006389804