Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究の目的は、国境を越える社会正義論の倫理的根拠として、功利主義あるいは契約主義とは異なる種類の倫理的根拠を模索することであった。平成18年度の実績として、研究者は、ヌスバウムが契約主義の新解釈をつうじて、契約主義と親和性をもつ自らのケイパビリティ・アプローチが、アリストテレス的善い生の構想にもとづくものでありながら、「善の理論」ではなく「正の理論」であることを証明しようとしていることを、明らかにすることができた。また、そのヌスバウムが、グロティウス流の自然法論に可能性を見いだしていることは、政治理論における倫理理論の役割を問い直すものであることも明らかにすることができた。また、研究者は、5月に来日した倫理学者ピーター・シンガー氏の通訳を務める機会をもち、その機会を通じて、国境を越える社会正義論の根拠としての功利主義の可能性を再評価するに至ったとともに、功利主義を激しく批判するヌスバウムが構築しつつある倫理的根拠が、功利主義的要素を含んでいることを確認するに至った。本年度の研究発表としては、政治思想学会の学会誌『政治思想研究』で、ケイパビリティ・アプローチの可能性を指摘した「ロールズ「諸国民の法」にみる「政治」の限界」を発表し、慶應義塾大学が発行しているJournal of Political Science and Sociology誌上で、ケイパビリティ・アプローチの問題点を指摘した"Consumerism and QOL in Singapore : a Critical Assessment the Capability Approach"を発表した。また、ヌスバウムの近著Frontiers of Justiceの翻訳に着手した。
All 2006 2005 2004
All Journal Article (5 results) Book (2 results)
政治思想研究 第6号
Pages: 110-136
40007307953
Journal of Political Science and Sociology 6
Pages: 55-71
創文 490号
Pages: 1-5
40007475930
思想史研究 5号
Pages: 188-207
ライブラリ相関社会科学 10
Pages: 313-331