Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
新規遺伝子の機能解析において、目的遺伝子の連続的な発現制御系は重要な役割を果たすと考えられるため、この発現制御系の開発に向け部位特異的組換え酵素CreとFLP発現アデノウイルスを併用した目的遺伝子連続発現制御系の検討を行っている。昨年度までにモニター細胞株を用いた各々の至適ウイルス感染量とその効率について予備的な検討を行っており、FLPの組換え効率はCreに比べ劣るものの、ウイルス量を至適化することで100%の細胞で目的の発現制御が可能であった。しかし、FLPの動物細胞での組換え効率が低いため、FLP発現ウイルス量が多く必要であること、また発現に強力なプロモーターを用いる必要があることから、本系の応用範囲拡充のためにはFLPの改良が必要であると考えられた。そこで本年度は様々な変異FLP発現組換えアデノウイルスを作製し、in vitro、in vivoの両面から詳細なFLP組換え効率の解析を行った。その結果、今までFLPにはCreのような細胞毒性は報告されていなかったが、FLPを細胞内で高発現するとFLPの組換え活性に負の影響を与える可能性が示唆された。また温度安定型FLPとして報告されているFLPeは動物細胞内で安定であるため野生型と比べて見かけの組換え効率は高いものの、FLPタンパク質あたりの組換え効率は野生型に劣っていたことも明らかにした。これらの結果からより活性の高いFLPの構築は困難である可能性が示唆された。しかしFLPe発現アデノウイルスは、FLP発現ウイルス量を低減できるため有用性が高いと考えている。更に本年度は本系の応用例として考えられるコンディショナルノックアウトマウス作出法の簡便化に向け、ES細胞への効率的なFLP発現組換えウイルス感染法の検討を行った。立体的なコロニー状で増殖するマウスES細胞の内層細胞まで感染するように浮遊系細胞への感染方法を応用し、またウイルスが支持細胞であるfeeder細胞ではなくES細胞のみに効率良く感染するようにES細胞のみを濃縮し、ベクター感染後に新たなfeeder細胞上で培養を行う方法を確立した。まず本法を用いてGFP発現アデノウイルスで検討した結果、非常に少ないウイルス量でほぼ100%のES細胞コロニーでGFPの発現を確認し、本法の導入効率は極めて優れていたことを確認した。そこでFLP発現アデノウイルスとFLPによりGFPの発現が誘導されるFLP標的ウイルスを本感染法を用いてES細胞へ共感染を行った結果、細胞への毒性が確認されない範囲でほぼ100%の細胞においてFLPによる発現誘導を確認した。本感染法を用いることによりCreによるコンディショナルノックアウトマウスの作出がより簡便になると考えられ、FLPとCreによる連続発現制御系の応用例の一つとして期待されると考える。
All 2006
All Journal Article (1 results)
Microbiol Immunol 50
Pages: 831-843