Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
近年、真核細胞におけるmRNAサーベランス機能のひとつとして、転写・複製中のエラーやスプライシング時のエラーにより生じる不適切な翻訳終結コドン(ナンセンス変異)を含むmRNAを選択的に分解するNMD(Nonsense-Mediated mRNA Decay)経路と呼ばれる監視機構の存在が明らかとなってきた。既存のNMD関連因子は、まず遺伝学的に単離された後に、ナンセンス変異を含むmRNA上に局在し機能することが明らかとなってきたが、分解経路の活性化を担う因子をはじめとしたNMD特異的な制御因子は不明であった。そこで私はNMD経路で分解されるmRNA上の局在を指標とした生化学的手法を用いて、NMD特異的因子の網羅的な単離を試みることにした。モデル生物としては出芽酵母細胞を用いることにした。HIVウイルス由来のmRNA配列特異的なRNA結合蛋白質(姻)認識配列を組み込んだ、正常なレポーター遺伝子と、それにナンセンス変異を含ませた遺伝子の2種類を用意し、それぞれを出芽酵母細胞に導入し、λN蛋白質-レポーターmRNA複合体を免疫沈降した後、SDS-PAGE上で展開し、MARDI TOF-MASSによって蛋白質を単離同定する方法を試みることにした。正常なレポーター遺伝子とナンセンス変異を含むレポーター遺伝子、それぞれを導入した出芽酵母細胞の抽出液からレポーターmRNA-結合蛋白質複合体を単離し、複合体中に含まれる蛋白質の差異を検出した。その結果、ナンセンス変異を含むmRNAに特異的に結合している蛋白質が存在したため、MARDI TOF-MASSを用いて単離同定したところ、Ssal蛋白質であることがわかった。Ssa1のNMD経路への寄与を検討する目的で、Ssal遺伝子の破壊株を作製し、ナンセンス変異を含むmRNAの分解を検出したところ、分解速度が著しく低下していることがわかった。さらに、SsalはUpf因子群と直接的に相互作用することを確認している。これらの結果から、SsalがNMD経路におけるトリガーとなる可能性が高いと考えている。
All 2004
All Journal Article (1 results)
The Journal of Biochemistry 136・6
Pages: 805-812