野生カワウにおける有機塩素系化学物質汚染の生体影響に関する研究
Project/Area Number |
04J50411
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Basic veterinary science/Basic zootechnical science
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Research Institution | Gifu University |
Research Fellow |
齋田 栄里奈 岐阜大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2004
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2004)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2004: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | カワウ / 有機塩素系化学物質 / 甲状腺 / 免疫機能 / ニホンウズラ / 甲状腺機能低下症 |
Research Abstract |
本研究では、2002年および2003年に琵琶湖、群馬県および相模川で採取したカワウを用いた。成鳥は幼鳥よりも高濃度のダイオキシシ類を蓄積していることが明かとなった。さらに、雄は雌よりも高濃度のダイオキシン類を蓄積していることが明かとなった。本研究では、ダイオキシン類の蓄積濃度が高い個体で甲状腺の形態学的な変化が多発していたが、本研究においては、ダイオキシン類の蓄積濃度と、甲状腺の形態学的変化との間には一定の関係は認められなかった。本研究と1998年および1999年の結果の違いは、カワウに蓄積していたダイオキシン類濃度が、本研究で用いた個体では、1998年と1999年で用いた個体の半分から2/3に減少していたことが原因の一つとして考えられる。 ダイオキシン類蓄積濃度と甲状腺中甲状腺ホルモン含有量、下垂体前葉の甲状腺刺激ホルモン(TSH)β鎖陽性細胞数および甲状腺濾胞上皮細胞のPCNA陽性細胞の割合との間には、一定の関係が認められなかった。しかし、ダイオキシン類蓄積濃度と血中甲状腺ホルモン濃度との間には負の相関関係が認められた。これらの結果から、ダイオキシン類の蓄積による血中甲状腺ホルモン濃度の低下は、末梢における甲状腺ホルモンの代謝による影響である可能性が示唆された。さらに、ダイオキシン類蓄積濃度とH/L比との間には正の相関関係が認められることから、日本の野生カワウにおいて、ダイオキシン類の蓄積により免疫機能の低下が発生している可能性が示唆された。 人為的に甲状腺機能を低下させたニホンウズラでは、Sheep Red Blood Cellに対する抗体産性能の低下およびH/L比の増加傾向が認められた。これらの結果は、ニホンウズラにおいて、人為的に誘発した甲状腺機能低下により副腎皮質機能が低下し、あわせて免疫機能が低下したことを示すものである。また、H/L比は、免疫機能を評価する指標の一つとして有用である可能性が明かとなった。これらの結果を総合して考察すると、高濃度のOCsを蓄積している日本の野生カワウで発生している甲状腺機能の低下は、免疫機能の低下を引き起こしている可能性が示唆された。 以上の結果から、日本の野生カワウでは、ダイオキシン類の蓄積により甲状腺機能の低下に加えて血中甲状腺ホルモンの代謝が促進され、血中甲状腺ホルモン濃度が低下したものと推察された。また、免疫機能低下が発生している可能性のあることが示唆された。
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Report
(1 results)
Research Products
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