Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
超臨界流体は、溶質を溶解するという溶液的性質ならびに拡散性に優れているとう気体的性質を合わせ持った工業的、学術的にも魅力あるものである。その超臨界流体の代表である超臨界水は常温常圧では不溶な多くの有機物質を溶解し、圧力・温度の変化で連続的に流体の諸物性を容易に制御できる利点などから、環境にやさしい溶媒として様々な反応系への利用が考えられている。本研究グループでは、その中性子散乱を用いて特に低密度超臨界水の構造について、短距離相関から長距離相関まで幅広いスケールにおいて観測し、その特徴的構造を実験的に明らかにすることを目的とした。これまで短距離相関は、高エネ機構の中性子全散乱装置(HIT)により測定を行い、水素の同位体置換法を用いて酸素-酸素、酸素-水素、水素-水素の各部分相関関数を抽出することができた。これにより、水素結合は、低密度状態においても存在しているものの、室温や0.6g/ccの状態とくらべて大きく揺らいでいる。酸素原子の周りの酸素原子配位数、つまり水分子の周りの水分子配位数は室温の半分以下である2個以下に減少しており、密度低下により水分子配位数が減少しているこを明らかにした。中、長距離構造については高エネ機構の中性子小角/広角散乱装置(SWAN)を用いて、D20について実験を行った。小角散乱では圧力と温度を変化させて相関長の変化を観測した。その相関長としてはX線による測定結果と同様であった。相関長の極大は臨界点よりも高温、高圧側に観測された。さらに0.1□^<-1>【less than or equal】Q【less than or equal】1□^<-1>の領域には直線的なプロファイルが観測されており、この傾きからフラクタル次数を求めると臨界点に近づくほど、2に近くなることがわかった。