Research Abstract |
本研究は,超伝導-常伝導2層薄膜(S-N)接合系のクリーンな極限の理論に,不純物散乱の影響を取り入れ,実験との定量的比較を可能とする理論的枠組みをつくることを目的としている. 1.クリーンな極限から,不純物散乱による影響を摂動論により取り入れた.薄膜の界面の影響は,各層の準古典的グリーン関数にたいする境界条件あるいは接続条件として取り入れる.不純物散乱を考えてもこの条件は変わらないことが明らかになった.各層の準古典的グリーン関数は,空間推進演算子により構成されている.不純物散乱の影響は,空間推進演算子が満足すべき一階の微分方程式のみに現れる. 2.半無限S-N接合系の線型ギャップ方程式は,1次元系の場合,電子の平均自由行程が短い極限でde Gennesが導いたダーティ極限の表式と一致することを確かめた.3次元系の場合についても検討している. 3.磁場中の薄膜超伝導体の転移温度の計算に適用した.不純物散乱の影響を考慮してもKogan達の理論計算の結果とは逆に,転移温度の増大は起こらないことが示せた.さらに,薄膜超伝導体の臨界磁場の温度変化は,電子の平均自由行程の長さに大きく依存することを明らかにした. 4.クリーンな極限の計算では,S-N接合系のN-層での局所状態密度は,S-N界面からの距離によらず同じエネルギー依存性をしめす.一方,STMの実験では,場所により局所状態密度は変化している.不純物散乱の影響を取り入れた空間推進演算子を用いると,N-層での局所状態密度は場所により変化することは明らかになった.数値計算は進行中である.
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