Research Abstract |
本研究では,学業達成場面における学習者の感情経験について,感情経験の構造の検討と,各感情が後続の学習行動と学習結果としての成績に及ぼす影響の検討を課題として,実験的・調査的検討を行った。 感情の構造については,SD法による内包的意味の側面からの検討,喚起強度の測定,評価データをもとにした多変量解析的検討,の3研究を実施した。その結果,次のことが明らかとなった。 (1)感情一般について考察された,快-不快,覚醒-無覚醒,支配-服従の3次元は,達成関連感情の構造記述においても有効である。 (2)達成関連感情の構造把握においては,支配-服従次元が最も包括的で主要な次元である。 (3)内容的・機能的に類似の特質を有する感情は,しばしば同程度の喚起強度を示す。 感情が学習行動と学習結果に及ぼす影響については,大学生を被験者とした仮想場面実験と,中学3年生を対象とし,数学の定期試験を達成課題とした調査を実施した。その結果,次のことから明らかとなった。 (1)学習行動は,よろこび,統制感・向上心,不愉快・困惑,後悔,くやしさの5感情によって促進さ,あきらめによって抑制される。 (2)学習結果としての成績に対して,感情は基本的には学習行動を媒介として間接的に影響を与える。 (3)原因帰属などの認知は,感情を媒介として間接的に学習行動に影響を与える。これは,B.Weinerが動機づけ過程について主張する認知→感情→行動という因果連鎖モデルに対応する。
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