Research Abstract |
現在,国立天文台との共同研究により、マイクロレンズアレイ多瞳分光器の制作を進めている.この新しいタイプの装置は従来の装置に比べて撮像分光観測(撮像データと分光データを同時に取得する観測)における観測効率が非常に高く、同じ観測時間で数倍の数の天体が観測可能で、統計的な研究に適している.また,この装置は既存の同じタイプの装置に比べると,夜光の補正を可能とする光学系がつけ加えられており,銀河などの淡く広がった天体を高精度で観測することが可能になる.現在制作中の装置は低分散分光による輝線強度比の観測を目的としているが,より高分散の透過型分散素子(グリズム)の購入によって中分散分光による銀河の内部運動の観測が可能になる.そこで,楕円銀河の恒星系の内部運動の観測を目的として,近赤外域にあるカルシウムの吸収線用のグリズムを購入した.分光器は低分散用に作られているため,2個のグリズムを使用して,より高分散の観測を行う.また,ガス系の内部運動の観測を目的として,水素のバルマ-輝線用のグリズムも購入し,恒星系とガス系の運動の比較を可能にした.今後,分光器のテストを進めながら,観測を行う予定である. 一方,撮像分光観測データの処理を実際に進めるためのストップとして,従来型の分光器(スリット分光器)を用いて撮像分光観測を行いデータを取得した.観測は国立天文台岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡を用い,SNGと呼ばれる観測モードで,スリットによる天体の掃天観測を行った.現在,このデータをもとに3次元データキューブを作成し、解析を進めている.この解析から、不規則銀河のガス系の内部運動に約1キロパーセクを単位とするモザイク状の構造が存在することがわかってきた.
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