Research Abstract |
本研究は平成5年度の単年度計画で,柔らかい最適化手法として近年注目される遺伝的アルゴリズムに関する新しいテーマに取り組むものであり,今年度内で,複雑な系の最適化に遺伝的な解法を適用する上での問題点を明らかにし,拡張した解探索アルゴリズムの提案を行うことを目的としていた.1年間の研究活動による本研究の成果は以下のとおりである. 大規模で複雑なシステムの最適化では一般に,システム性能を解析的に求めることは困難で,シミュレーションあるいは実際の動作を通した性能評価が必要である.本研究ではまず,これら現実の最適化問題の特徴を考察し,(1)観測される評価量に雑音(たとえばシミュレーションの乱数による評価量の変分など)が含まれること,(2)評価に時間がかかるため計算資源の有効な配分が性能向上の鍵となること,の2点を重要な問題点として指摘した. 次に上記の性質を扱うため,(i)評価量の誤差,および,(ii)探索空間上での評価量の分布,をダイナミックに推定しながら探索過程を制御し,限られた時間の中で効率的に良い解を求める適応的な探索法を開発した.また代表的なベンチマーク問題を用いて従来の方法との性能比較を行い,雑音のある探索問題における提案手法の優位性を示した. 本研究の成果である新手法は,統計学の逐次決定理論を応用しており,遺伝的アルゴリズムだけではなく一般の生成検査法(Generate and Test Method)においても適用可能である.また本研究のもう1つの成果として,遺伝的アルゴリズムが行う超平面上での探索処理に関して有用な知見が得られたことがあげられ,今後の研究指針として役立てる予定である.
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