Research Abstract |
活性型ビタミンD3の代表的な作用である骨代謝と文化誘導作用の分離増強を目指し、A環部の誘導体の合成とそのコンフォメーション解析を行なった。活性型ビタミンD3のA環部位は通常1位の水酸基がアキシャル-エクアトリアルの平衡変換をほぼ1:1で行っている。この水酸基の配置をどちらか一方に固定することができたらD3活性の分離増強、さらにはセプター結合サイトの構造を明らかにすることが期待できる。今回分子内Heck反応を用いたA環部の一般合成法を用いて2位に種々の置換基を有する新規活性型ビタミンD3誘導体の合成を行なった。得られたそれぞれの誘導体についてNMR実験によりコンフォメーション解析を行なったところ、2beta-イソプロピル基を有する1beta,3beta-ジヒドロキシ誘導体は、1位水酸基のアキシャル-エクアトリアルの平衡変換が約98%アキシャル側へ傾くのに対し、2beta-イソプロピル,1alpha,3beta-ジヒドロキシ誘導体はエクアトリアル側へ94%まで傾くことがわかった。ところでD3活性を全く示さない1beta,3beta-ジヒドロキシ誘導体については、完全に1位水酸基がアキシャル側へ平衡が傾くことが知られている。今回合成した誘導体は活性発現のために重要であるエクアトリアル性の1alpha水酸基を有しており、D3活性が増強された誘導体であることが期待され現在検討中である。又、今回1環類似化合物として10位にエキソメチレンを持たないモデル化合物を合成し1位と3位の水酸基のコンフォメーション解析を行ったところ、実際のA環とほぼ同様なコンフォメーションを有していることが判った。さらに5、6-エポキシ誘導体について同様な傾向がみられることが新たに判明した。
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