実験材料として、デルフィニウム‘ブルーバード'の実生を用いた。昨年の冷夏の影響で、早期抽だい株の発生はほとんどみられなかったため、播種から抽だいまでの期間の長い晩生の個体と、抽だいまでの期間が短い早生の個体間で成育の比較を行ったが、早生の個体は、晩生の個体よりも栄養成長期間が短いにもかかわらず、早期抽だい株にみられるような極端な花穂の小型化がみられなかった。また主枝(一番花)が開花した後株もとから発生した一次側枝(二番花)が開花するまでの日数については、主枝の早晩との間に相関は認められなかった。同じく実生を用いて、ロゼット株と低温処理を行ってロゼット打破した株との間で成育を比較したところ、本葉展開前の小苗に低温処理を施した場合、極端に小苗のうちに抽だいして夏期に発生する早期抽だいに似た形態を示し、ロゼット株と早期抽だいは互いに生理的に反対の状態にあり、ロゼット打破株と早期抽だい株は生理的に類似した状態にある可能性が考えられた。また、一次側枝(二番花)が開花するまでの日数についても、ロゼット株とロゼット打破株との間に差は認められなかった。光合成速度はロゼット化した株とロゼット打破した株との間で差は認められなかったが、呼吸速度はロゼット打破した株で大きくなる傾向がみられ、炭水化物の蓄積や転流パラーンが抽だいたロゼット化と密接に関係している可能性が考えられた。デルフィニウムの実生苗については遺伝的に非常に雑ばくであり、早期抽だい株とロゼット株について、栄養繁殖個体を用いて呼吸、光合成活性のほか炭水化物の動態について比較を行う必要がある。
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