Research Abstract |
食餌成分の乳腺における乳汁タンパク質の合成・分泌に及ぼす影響を解析するために、マウス(ddY,8週齢)を交配させた後、妊娠期・泌乳期を通じて高タンパク質食(40%カゼイン)、高脂肪食(30%コーンオイル)あるいは通常食(25%カゼイン、5%コーンオイル)を摂取する群、および妊娠期は通常食を摂取するが泌乳期には高タンパク質食あるいは高脂肪食を摂取する群の計5群に分けた。各群間でのエネルギー摂取量は等しくなるようにし、親の体重および子供の体重を2日毎に計測した。分娩後、経日的に搾乳し乳汁タンパク質成分の分析を行った。 各群間で親の体重、および子供の成長に有為な差は見られなかった。乳汁タンパク質量および組成を、alpha-,beta-,gamma-,delta-カゼイン、alpha-ラクトアルブミンおよび乳脂肪球被膜を構成するタンパク質等に対するウサギ抗血清を用いたELISA、ウエスタンブロッティング法により解析したところ、各群間でほとんどのタンパク質合成量に明確な差は認められなかった。しかしながら分子量33-36キロダルトンの糖タンパク質含量が泌乳期の進行と共に減少すること、その減少の度合いが泌乳期に高脂肪食を摂取させた群では緩やかなこと、および新生児の受動免疫機構に寄与することが知られているラクトフェリン含量が分娩後一端は減少するが、その後泌乳終了期まで徐々に増加することを新たに見いだした。今後はこれら乳汁タンパク質の合成に及ぼす食餌成分の影響を遺伝子レベルで解析すると共に、現在進行中の培養乳腺上皮細胞を用いたin vitroにおける解析を進めることにより、妊娠期・泌乳期における食餌成分の乳汁タンパク質の合成に対する影響のより詳細なメカニズムが明らかになると思われる。
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