Research Abstract |
細胞接着分子リガンドであり,癌の転移機構との関連が注目されている糖鎖Sialy Le^a,Sialy Le^xを合成する糖転移酵素,フコース転移酵素の活性を正常胃粘膜,正常大腸粘膜,胃癌,大腸癌で測定した.基質としてはピリジルアミノ化したオリゴ糖を用いた.また同時に組織におけるSialy Le^a,Sialy Le^xの発現をそれぞれに対するモノクローナル抗体で検出した.この結果,胃癌では正常胃粘膜に比べてSialy Le^xの発現が亢進するとともにSialy Le^xを合成するalpha1,3フコース転移酵素の活性が上昇していた.Sialy Le^aを合成するalpha1,4フコース転移酵素の活性については明らかな癌性変化は認められなかった.大腸癌でもSialy Le^x発現の亢進が高頻度に見られるが,alpha1,3フコース転移酵素活性は正常大腸粘膜でも高い値を示しており,酵素活性の癌性変化は明らかでなかった.大腸癌ではSialy Le^aの発現が亢進している組織もあるが,alpha1,4フコース転移酵素の活性とは必ずしも一致していなかった.癌の浸潤や,転位との関係を見るために,癌の漿膜浸潤,壁内浸潤,リンパ節転移巣での比較検討を行ったが,明らかな傾向は認められなかった.また,大腸癌については糖脂質を基質としたフコース転移酵素活性の測定も行ったが,やはりSialy Le^x発現との関連は見い出せなかった.これらの結果から胃癌においてはSialy Le^x発現のためにalpha1,3フコース転移酵素が重要であるが,大腸癌においてはSialy Le^x発現を制御するkey enzymeはalpha1,3フコース転移酵素ではないことを意味し,今後はその前段階にある合成経路の酵素活性を系統的に解析する必要がある.
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