Research Abstract |
細胞接着阻害物質のスクリーニング 大腸癌細胞(HCT-15,HT29)と血管内皮細胞(HUVEC)でマウスを免疫し,がん細胞の細胞外基質蛋白や血管内皮細胞との接着を抑制する抗体をスクリーニングした.ポリクローナル抗体のレベルでは,接着を抑制する抗体は得られなかった. モノクローナル抗体のレベルで接着を抑制する抗体が得られるのではないかと考え,モノクローナル抗体を作成し,癌細胞の細胞外基質蛋白や血管内皮細胞への接着を阻害する抗体をスクリーニングしたが,有用な抗体は得られなかった. インテグリンと大腸癌の浸潤転移との関連 われわれは細胞外基質蛋白の受容体であるインテグリンの抗体が浸潤転移を抑制することを浸潤転移モデルで示しているが,この分子の大腸癌の浸潤転移における役割を検討し,大腸癌浸潤転移抑制の可能性を検討した. 大腸癌組織51例の癌部と正常部より蛋白を抽出し,抗beta1サブユニット抗体を用いてウエスタンブロットでbeta1サブユニットの発現性の変化につき検討を加えた.19例にbeta1サブユニット異常が認められた.この異常と臨床進行度との関連を検討したしたところ,深達度では,beta1サブユニット異常群は,ss(a1)13例,s(a2)2例,si(a3)4例であるのに対し,beta1サブユニット正常群は,sm4例,mp7例,ss(a1)16例,s(a2)3例,si(a3)2例であった.beta1サブユニット異常群はすべてss(a1)以上の深達度であり,有意に深部へ認められたのに対し,beta1サブユニット正常群は,32例中12例に認められた.beta1サブユニット異常群は有意にリンパ節転移が多く認められた. 以上のことからインテグリンの分子異常が大腸癌の浸潤転移との相関が明らかとなり,この分子異常の解明による浸潤転移抑制の可能性が示唆された.
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