黎明期の美術科教育における描画指導法の伝播過程とその有効性の再検討
Project/Area Number |
05780183
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
教科教育
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
赤木 里香子 岡山大学, 教育学部, 講師 (40211693)
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Project Period (FY) |
1993
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1993)
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Budget Amount *help |
¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1993: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 日本美術教育史 / 欧米美術教育史 / 美術科教育 / 図画教育 / 描画 / 児童研究運動 / 児童画 / 児童博覧会 |
Research Abstract |
日本における毛筆画教育時代の成立と同時期、すなわち1880年代末から90年代にかけて、欧米では児童研究運動(Child Study Movement)が興り、子どもの内的世界を捉える有力な手がかりとして、彼らが手本を見ずに自発的に描く絵、いわゆる児童画が注目され始め、その美的特質が原始美術に類比されるに至った。イギリスの美術教師エベネザ-・クック(Ebenezer Cook)が1885年に初めて示した描画発達段階は、J・サリ-(James Sully)著『児童期の研究』(1895年)にも取り入れられ、広く知られるところとなった。このような動向は、教育ジャーナリズムを通じて日本にも伝わった。1898(明治31)年に創刊された『児童研究』誌には、考古学者や心理学者による、子どもの落書きや自由に描いた絵の収集・分析に関する報告、比較文化研究の材料として児童画を募る、外国からの依頼文などが掲載され、児童画への関心が学際的かつ国際的なものであったことをうかがわせる。 1900〜1910年代、義務教育制度の成立とともに、学齢期の子どもを対象とする児童博覧会が各地で開かれ、児童画が展示される機会も増え、小学校の図画教育が臨画に偏っていることを批判する意見も、しばしば聞かれるようになった。図画教育改革の気運がたかまるなか、1903(明治36)年に結成された研究団体「図画教育会」の機関誌『図画教育』においても、描画指導の重点を臨画から写生へ移そうとする傾向が現れている。しかし、これは子どもの自由な表現形式を尊重したためとは言えず、写生における描画能力を伸ばすことが最重要視され、臨画は写生の前段階の練習にすぎないと考えられたためと言えよう。さらに、同会の唱える「教育的図画」においては、目的や指導過程における位置づけが曖昧なまま、このような練習、つまり臨画の必要性がかえって強調される結果となった。自由画教育運動は、このような状況に対する反動として呼び起こされたものと考えられる。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)