Research Abstract |
本研究は,協同トムソン散乱法による核融合プラズマのイオン温度計測において,プラズマへの入射光源となる大出力光励起D_2Oレーザーの単一モード化を目的とする。従来のD_2Oレーザーの多モード発振出力は,イオン温度の測定結果に重大な誤差を与えることが示されており,これを単一モード化する技術の確立が必要となっていた。 本研究では,小出力の単一モード発振・小型D_2Oレーザーを用い,その出力を大型D_2Oレーザー増幅器で増幅する「増幅方式」と,小型レーザー出力を大型D_2Oレーザー発振器に入射し,その発振出力を直接単一モード化する「注入ロック方式」の二つの方法を試みた。増幅方式では,大型D_2Oレーザー増幅器のガス圧を4〜6Torrに設定し,小型レーザーの発振周波数をASE(Amplified Spontaneous Emission)放射のピーク周波数より20MHz程低くした場合に,半値幅で10MHzの極めて狭帯域な出力が得られた。出力エネルギーは約50mJである。一方,注入ロック方式では,小型レーザーの発信周波数が大型レーザー発信器の縦モードとよく一致しており,かつ,大型レーザーの発振パルスの生長前に小型レーザー光が入射された場合,注入光と結合したモードが支配的に発振し,半値幅で約5MHzの狭帯域出力が得られた。ただし,この場合には,他のモード成分も僅かながらの振幅で同時発振した。注入ロック方式の出力エネルギーは約110mJである。 本研究で用いた出力規模のD_2Oレーザーで,上記のような狭帯域発振出力が得られたのはこれが初めてである。なお,増幅方式の実験に先立ち,予備実験として,D_2Oレーザー増幅器からのASE放射のスペクトル測定を行ったが,この実験においてもいくつかの新しい知見が得られている。このように,本研究の所期の目的はほぼ100%達成され,大出力光励起遠赤外レーザーの単一モード化の方法を確立することができた。
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