Research Abstract |
本研究者は従来,生命の起源,特に光合成の起源に関する知見を得ることを目的とした調査研究を行って来たが,幸いにも当該研究課題に対し平成5年度文部省科学研究費補助金の援助を受け,実験的研究を開始することが出来た。御助成に対し深謝申し上げる次第である。 本研究は,原始海洋に多量に存在したと思われるFe^<2+>イオン,あるいはFe^<2+>を含む無機化合物の光触媒機能に着目し,モデル原始大気を出発物質とした前生物的な有機化合物の生成過程をシミュレートしようとするものである。その第一段階として,原始大気の主成分であったと予想されるCO_2の光還元によるホルムアルデヒドの生成反応を取り上げた。これまでに種々の実験設備を整えるとともに実験手法を確立し,現在種々の試料を用いて光照射実験を行っている。 補助金により,試料溶液にCO_2を常時通気させつつ,効果的に光照射を行える実験装置(タングステンランプ,冷却装置,ガス循環装置,ガラス製反応セルおよび攪拌機より構成)一式を作成した。また,ポテンシャルスイ-パ-を購入し,既存の設備と併せてサイクリックボルタンメトリー装置を組立て,光反応に伴うFeイオンの酸化数変化を検出する為の基礎的な知見を蓄積した。さらに,本試料におけるホルムアルデヒドの定量法として,フェニルヒドラジン法が適用できることを確認した。また,試料の一つとして,粘土あるいは火山灰にFe^<2+>が吸着した状況をシミュレートするために,シリカコロイド表面の吸着能に関する予備的な実験も行っている。以上の成果に基づき,現在種々の試料を用いて光照射実験を行っている段階である。
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