Research Abstract |
魚肉の冷蔵初期の急激な軟化の原因として,生化学的な研究からコネクチンおよびV型コラーゲン変化の関与が推測されている。コネクチンの分析には,SDS-PAGEが,汎用されている。しかし,予備実験の結果,SDS-PAGEのサンプル処理中にalphaコネクチンが,一部変化を受ける可能性が示唆された。コネクチンの再現性あるSDS-PAGEパターンを得るため,SDS-処理の条件を再検討した。その結果,還元剤の非存在下手,チオールプロテアーゼ阻害剤処理を行うことにより再現性のある結果が得られた。この事実は,SDS処理中に内因性プロテアーゼがコネクチンに作用する可能性を強く示唆する。一方,本研究で用いたサンプル調製法では,内因性プロテアーゼのコラーゲンへの変化は,有効に除かれている(Sato et al.,1987, Nippon Suisan Gakkaishi,53,1431)。これらの分析手法を用いて、肉質の軟化の著しいマイワシ,中間的なコイ,および軟化が顕著に認められないトラフグを用い,一日冷蔵後のコネクチン,I,V型コラーゲンの変化を調べた。その結果,肉質の軟化が顕著な魚種ほどV型コラーゲンの特異的な可溶化が生じており,一方コネクチンのalpha鎖の消失は,軟化のほとんど生じていないトラフグで,もっとも顕著に認められた。これらの結果は,alphaコネクチンの消失が生じていても必ずしも肉質の軟化が生じないことを示している。さらにV型コラーゲンの可溶化が進んだ魚種では,細胞周辺結合組織中のコラーゲン細繊維の崩壊および結合組織の脆弱化が認められている。以上の結果より,V型コラーゲンに生じた変化が魚肉の冷蔵初期に生じる肉質軟化の主因であると結論した。
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