Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2007: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2006: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2005: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Research Abstract |
構成主義およびその心理療法では,身体性(行動)が人間経験の根本であると考えられている。そのような考え方は,古くは仏教などの東洋哲学に見られるものであるが,実際に,姿勢という行動によって行動主体者の感情・生理変化がもたらされることを,報告者はこれまでに研究してきた。本年度は,特定の姿勢時の発声や生理データの詳細な解析により,姿勢の効果をさらに明らかにし,抑うつの軽減に効果のある姿勢を特定すること試み,またその理論的な示唆を論考した。 発声については,ノイズの関係で詳細な分析はできなかったが,結果は姿勢によって生じた感情状態と概ね対応していた。ノイズを除去した再分析が課題であるが,姿勢による感情変化について音声を用いて検討した例はなく,貴重なデータといえる。生理データに関しては,自律神経系活動の時系列解析を試みたが,結果は複雑でさらなる解析・整理が望まれた。探索的に中枢神経系(前頭葉活動)のデータを取ったところ,直立や後傾の姿勢において活動が顕著になり,前屈の姿勢で機能低下が起こることが判明したが,これは自律神経系のデータと矛盾するものではなかった。また,これらの結果と一致して,抑うつ時には直立の姿勢のほうが前屈姿勢よりも気分の回復に効果をもつことが,実験によって明らかになった。これは姿勢を心理療法へと応用するための第一歩となりうつ成果であるといえる。 実験研究に加え,仏教をはじめとした東洋哲学が心理学にどのような意義をもたらすかについて,構成主義の観点から理論的な研究を行った。とりわけ,昨今,欧米で仏教瞑想に由来するマインドフルネスという,身体感覚への気づきが重視されるアプローチに注目が集まっているが,その概念や心理学的な意味が不明瞭であるため,その明確化を試み,行動や感情のもつ臨床的な示唆について議論した。
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