Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2006: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2005: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Research Abstract |
現生貝形虫類8上科23科35属45種について,TEM観察を主体として背甲の超微細構造を網羅的に記載し,その形態形成のメカニズムについて理解を深めた.種多様性の高いPodocopida内ではクチクラ構造の多様化が顕著で,科・属内において高い構造的多様性を持つことが示唆された.これに対して,表皮細胞の構造は目レベルにおいて非常に安定していた.この成果は今年度6月に,日本動物分類学会にてポスター発表された. さらに,貝形虫の背甲縁辺部,特に蝶番部に着目して網羅的な超微細構造の記載を行い,且つその発生に伴う形成過程を追跡した.蝶番部はこれまで独立した特殊な構造であると認識される傾向にあったが,本研究から,蝶番部の形態もクチクラ層の変形として理解可能とした.この成果は,今年度5月にHydrobiologia誌に受理され,印刷中である. 蝶番部の網羅的な構造記載は,蝶番構造の分類に用いる新しい概念をも確立し,化石記録との照合から貝形虫類の蝶番構造の進化経路を提示した.この成果は,今年度10月にBiological Journal of the Linnean Society誌に受理され,印刷中である.また,本研究では蝶番の発生学的な観察を行い,左右のhingementは同時に形成されるのではなく,片方のhingementが先行して形成され,後に形成されるものに対して鋳型の様な役割を果たすということを証明した.この成果は,今年度1月にJournal of Morphology誌に受理され,印刷中である. さらに,これまで形態的に保守性の高い形質であるとされてきたhingementが,環境要因によって形態変異を生じる可能性を実験生物学的に検証した.その結果,塩濃度を低下させた飼育条件の個体でのみ,hingementが著しく未発達の状態であることが確認され,上述の発生学的な観察と照らし合わせることで,塩濃度の低下によって引き起こされたのは「石灰化の弱化」ではなく「石灰化の遅延」であると結論づけることができた.この成果は今年度6月に,日本古生物学会2006年年会にてポスター発表され,日本古生物学会ポスター賞を受賞した.
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