Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度は、フィトクロムとその相互作用因子であるPIF3の関わりを研究した。PIF3はフィトクロムのPfr型特異的に相互作用するが、その相互作用によりリン酸化される。しかしながら、現在のところリン酸化の役割は不明である。そこで、PIF3のリン酸化の生理的意義を明らかにする為に、まずリン酸化部位を同定することにした。リン酸化部位の同定は異なる二つの方法により行った。まず、524アミノ酸からなる全長PIF3をN末端側、もしくはC末端側から短くした様々な断片とGreen Fluorescent Protein(GFP)との融合タンパク質を発現するような形質転換植物を複数作成した。そして、得られた形質転換植物を抗GFP抗体を用いたウエスタンブロットにより解析した結果、PIF3の中でも中央に位置する約170アミノ酸からなる領域がリン酸化に必要であることが明らかになった。この約170アミノ酸からなる領域には依然として約30個のセリンが存在していたが、他のPIFファミリーとの配列の比較から7個のセリンがリン酸化部位の候補として考えられた。一方で、リン酸化部位の同定の常套手段である質量分析装置を用いた解析も行った。まず、PIF3にHisタグを融合したタンパク質を発現する形質転換植物を作成し、変性条件下でタンパク質を抽出、そしてニッケルカラムによりリン酸化His:PIF3融合タンパク質を精製した。このようにして得られたリン酸化PIF3を質量分析により解析した結果、上述した約170アミノ酸からなる領域に一つリン酸化セリンが同定された。これはPIF3の短い断片を解析した結果と非常に良く一致した結果となった。今後は、得られた結果をもとにリン酸化部位に変異を導入した変異型タンパク質を発現する形質転換植物を作成し、リン酸化の有無の確認、ならびに遺伝子発現における役割などを解析して行きたいと思う。