Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2007: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2005: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
森林の歴史的変遷を考察するためには,そこに住む複数の動植物についてDNAレベルの遺伝的変異の地理的パターンを比較するといったアプローチが必要である。本研究では,照葉樹林の優占種であるシイ(コジイ・スダジイ)とそれに特異的に付く昆虫2種のDNA多型の地理的分布パターンの共通点を探し出すことで,照葉樹林の分布変遷を考察する。分子進化速度の大きく異なる植物と昆虫の多型情報を重ね合わせることで照葉樹林の動きを幅広い時間軸で考察することを目指している。 平成19年度に行った研究および得られた成果は以下である。 1.植物シイのDNA多型の地理的分布パターンの解析 ESTに由来するマイクロサテライトマーカーを32対開発した。日本のシイ林1地点から約20個体のシイの葉を採集し,マイクロサテライト多型の地理的構造をみた結果,コジイ・スダジイともに遺伝的分化の境界は,琉球地域および中国・四国地域にみられた。 2.シイに付く植食性昆虫2種におけるDNA多型の地理的分布パターンの解析 シイの実に特異的に付くシイシギゾウムシとシイの新芽に潜葉するヒラセノミゾウムシを材料に用い,シイと同地点においてミトコンドリアDNA多型の集団解析を行った。その結果,両種ともに中国・四国地域にハプロタイプの分布境界がみられた。 3.植物シイとそれに付く植食性昆虫2種におけるDNA多型の地理的分布パターンの比較 植物シイとそれに種特異的に寄生する昆虫2種の遺伝的変異の地理的パターンおよび集団内の多様性・独自性は,ほぼ一致することがわかった。したがって,シイとゾウムシは氷期の気候変動の影響を同じように受け,ある程度共通した分布変遷をたどってきた可能性が高いことが示唆された。植物のみならずそれに特異的に付く昆虫の遺伝的変異の地理パターンをも重ね合わせ分布変遷を解明する試みの有効性が示された。
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