Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
臨床医学、予防医学の運動療法で広く利用される自転車エルゴメータにおいて、筋活動指標としての筋音図の応用の可能性を検証した。被験者は健常男性8名で、筋音図はエレクトレットコンデンサマイクロフォンを用いて測定した。記録した筋音図はペダルからのトリガー信号を基に一定時間ごとに加算平均し分析した。まず、持続的運動時の筋音図応答を検討した。接触型センサ等を用いた先行研究(Stout et al.1997)の結果とは異なり、漸増負荷運動テスト時の外側広筋の筋音図積分値は運動負荷の増加に対して非直線的な増加を示すことが明らかとなった。全被験者の平均値を見ると、運動負荷が140Wを超えると筋音図積分値の増加率がそれまでより大きく減少し始めた。また、この変化点と換気性作業閾値との関係性も示唆された。さらに、高強度一定負荷(350W)での持続的運動において筋音図積分値は有意に減少した。一方で低強度(100W)では変化は見られなかった。以上より、筋音図を用いて筋のメカニカルな観点からの疲労閾値、あるいは機能低下を検知できる可能性が示唆された。次に、サドルの高さを変化させた条件、即ち筋活動時の関節角度を変化させた際の外側広筋と大腿直筋の機械的活動の変化を筋音図を用いて検討した。その結果、筋音図の積分値は筋電図やペダル踏力とは異なる変化を示した。動的筋収縮時の筋音図振幅は筋パワーを反映することから(Cramer et al.2000)、筋音図積分値の変化は運動条件(サドル高)によって変動する各筋の発揮パワーを反映していると考えられた。また、単位当たりの筋電図積分値に対する筋音図積分値はサドル条件で有意に変化し、単一筋レベルでの収縮効率(電気活動→機械活動)という新たな観点の指標として期待された。以上、筋音図が実践的な筋活動指標となる可能性が実験的に示され、今後更なる応用研究が期待される。