Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究は、「モロッコ南部ベルベル社会におけるイスラーム的知識の生成と流通」の実態を人類学的観点から解明することを目的として、平成17年度から平成19年度まで実施されてきた。これまでの研究において特に関心を定めてきたのはベルベル人の故地における聖者信仰、知識人の活動、イスラーム神秘主義教団のネットワークや、伝統的イスラーム教育再生運動などであった。これに対し第三年目にあたる平成19年度は、とくにモロッコ南部を故地とするベルベル人の社会的ネットワークの実態解明に当てられ、少なくとも今世紀初頭より開始された出稼ぎを通じてベルベル人が故地と都市という概念的区分を乗り越えた生活空間を形成していることが明らかにされた。翻って、故地における「イスラーム的知識の生成と流通」において主体的な役割を果たすとこれまで考えられてきた知識人、聖者、イスラーム神秘主義者の活動と現地住民の関係を捉える上でも、都市における住民の社会・経済活動や、都市生活者の宗教意識が、故地における宗教活動に少なからず影響を及ぼしていることも明らかにされてきた。既存の人類学的研究においてはローカルな社会における先の聖者の社会的役割などに対して関心が集められてきたが、これに対して、本研究は、ベルベル人の故地におけるイスラーム的知識の生成と流通が、住民の生活実態である出稼ぎ、一地域を超え出た社会的ネットワークと密接に絡み合いつつ、独自の展開を示していることを明らかにし、故地を超え出たベルベル人の生活空間を全体的に捉える視座が必要とされることを強調した。
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『アラブ世界におけるネットワーク型社会システムの維持メカニズム-地域的人間関係の生成・持続・変容に関する実証的研究』
Pages: 102-118
講座ファースト・ピープルス-世界先住民の現在 4 中東(綾部恒雄(監修)、 堀内正樹・松井健(編))(東京:明石書店)
Pages: 59-97